ビルウィ
愕然と表情を崩すと、冴羽女史は心持ち気の毒そうな顔を作り、軽く頭を下げ、
「アハハハッ! そういうこと!」
眼の前のガキは腹を抱えて笑い出しやがった! あれも全部このガキの企みか!
「まあまあ、そんな顔しないでヨ。これでも飲んで機嫌直して」
手渡されたトマトジュースに、俺はぐったりとしつつも立ったまま口をつけ……
ガシャン!
襲い掛かってきた今日最大のショックに、俺はグラスを落としてしまった。ジワジワと赤いしみが絨毯に広がっていく。
「あーあ、せっかく探偵サンのために作った特注品だったノニ」
俺は唇についたその赤い水滴を震えながら指に取り、鼻の近くに持っていく。鉄が錆び付いたような匂い……こんな匂いをだし、あんな苦い味を出すものなんてのは……!
「お気に召さなかったカナ? 双葉コーポレーション特製のトマトジュースは?」
その口からは、犬歯と言うには長過ぎる歯がはえている。普通、そういうのを、人は、牙、と言う。
青い眼だったはずなのに……赤く染まった瞳が笑っている……!
どういう訳か、俺の体は、首以外動く箇所が、無い!
決してこの奇怪な状況に呑まれた訳ではないのは、現状を打開しようと働く思考力と、動く首が証明している。
そう、恐らくだが……俺の首以外の体は、眼の前のコイツに支配されている!
「ウーン、中々いい推理ダ、サスガ探偵サン」