デウ
いつ殺されるか、わかったもんじゃない。たとえ知り合いだとしても……そう、たまたま何か口論にでもなったりしたら……そのバケモノ本人にその気がなくても、その場の怒りであっさり殺されてしまいかねない。
「ウン、だから人は昔からバケモノを排除すべく、社会というものを形成した。数はチカラって言うしネ」
「物の数に入らんだろう……一つ聞くが、あんたはどのくらいの数の人間を殺した?」
頭が冷えてきた俺は、その事に思い至った。そう、きっと、この可愛らしい形をした少女は昔から……
「数え切れないナァ。万は超えているよ、きっと」
……人間を……蚊を叩き殺すかのように……無造作に何十人も何百人も……クソォ!
俺の頭に巣食っていた恐怖という名の氷は、怒りに灼熱した炎によって完全に溶けた。もうビー・クールなんて言ってられっか!
依頼者の、あのどうしようもない絶望に埋め尽くされた顔が、蘇ってくる……こいつは、そういう絶望した人を、何人も生み出してきたのだ!
自然、俺の眼は剣呑なものに変わるのが自覚出来た。だがその感情を隠せる訳が無いし、隠す気も俺は無かった。
しかし、吸血鬼の少女はチッチ、とキザったらしく指を振ってみせるだけ。
「物の数に入らないって言うケド、どうして昔の人類は生き延びてこれタノ? 自分達の何倍も強いバケモノから」
「あんた等と人間じゃ数が違うだろう、数が? 殺しても殺しても蛆虫のように湧き出てきたからじゃないか?」
「さっき、物の数に入らないって言ったの、ダレ?」
……攻撃的な俺の台詞は、あっさりかわされた……
「……専門のエキスパートでもいたのか?」
幾分頭を冷やした俺がそう答えると、御名答、と吸血鬼はなんでもなさそうに答えた。
「それは今でもいてネ。しかも相性がサイアクで、こちらの主張には聞く耳持たないし、性格ワルイシ……」