デルウィスパ
正直、どうしたら良いものか……いや、こういう時にこそクールに、と言い聞かせるが……オンボロデスクの前で今まで集めた資料を並べてみても……事態を打開出来そうなグッドアイデアはちっとも浮かんでこない。
この一週間で九人の死亡者、六人の行方不明者が出ている……一刻も早く手掛かりをつかまなければならんと言うのに!
こうなったら、もう一度街で聞き込みを……それとも九条幸一本人に……あるいは危険を承知で血を抜かれた死体の件を……
……ああくそ、眠みぃ……今日は、この辺で……
ピンポーン。
……ったく、誰だよこんな時間に。
「ふぁ〜い、どちら様っすか?」
頭をボリボリと掻き、眠気によって今にも閉じそうなまぶたをどうにか開ける。
眼の前には、サングラスをかけてスーツを着た、ガタイのよさそうな男が二人。ボディガードだろうか。そして、その二人に守られるように、真ん中に眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の、秘書っぽい女性が一人。
「夜半遅くすみません、こちらは世良探偵事務所でしょうか?」
「あ、はあ、そうですが」
「私、双葉コーポレーションの秘書をしている、冴羽と申すものです、以後お見知りおきを」
その冴羽さんが頭を深々と下げ、懐から名刺を出したので俺はそれを受け取り……
「いきなりで大変申し訳ありませんが、我々についてきていただけないでしょうか?」
両脇の男が懐から取り出した物は、黒光りする拳銃だった。
クールに、クールに……落ち着こうぜ、世良智明。
しかし、いくらクールになっても……俺は、名刺を受け取った姿勢のまま、ただ頷くことしかできなかった。