ビルウィスパー
あまりにも平然と言うものだから、俺はつい口ごもってしまったじゃねえか……
二十七階です、とエレベーターの機会音声が冷たく響き、扉が開く。意外にも部屋はシャンデリアとか、高そうな絵画とか、大理石の床とかそういったものは無かった。どこにでもありそうな机、安物のソファ……そういった一般的な物で部屋は整えられている。
ただ一つだけ目立つ所は、どでかい窓。それは二十七階から見下ろす絶景を、これでもかというくらい主張していた。
そして、その窓から景色を見下ろしている人物が一人。
「コンバンハ。新米の駆け出し探偵サン」
クルッとこちらを向く……少女だ。少しばかり茶髪っぽく、形はボブカット。眼は青く、肌は白い。外人ではあり、ちょっとした美少女ではあるが……平凡な外国の美少女である……こんな豪華なホテルの最上階にいるような人物ではない。
俺はどう反応していいものかわからず、脇に控える冴羽に訝しげな表情を見せた。
「なにか?」
「なにか、じゃねえよ。あの子どもはなんだ?」
指差し、再びそちらを向くが……
「うぉう!」
「駄目だヨ、探偵サン。こんな可愛い女のコ捕まえて『なにか』なんてサァ」
……そいつは、俺の眼の前にいた。足音なんてしなかったし……何より、俺が冴羽の方をみたのは、ほんの一瞬だ!
そいつは俺の手を取って、安物のソファの前まで連れて行く。
「お、おい、ちょっと!」
俺はその手を振り払おうとするのだが……見かけによらず、力が強い、振り解けない……結局、俺はソファに座らされ……
「探偵サンが探している女のコって、この子でショウ?」
彼女がポケットから取り出したのは、そう、俺が探している三桜弥生という少女の写真。
何故、俺が、彼女を捜していることを知っている?!
俺は、表情を消し……クールに、冷静になれと、自分に言い聞かせた。